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🏠食べることは、生きること🍐

    食事という営みは、毎日の暮らしに
    静かに溶け込み、特別に意識される
    ことは多くありません。

    けれど、その「あたりまえ」が揺らぐ時、
    一食一食がどれほど尊いものだったのかを、
    私たちはようやく深く知るのです。

    いつか誰にでも
    “食べられない日”は訪れます。
    その現実はどこか遠い話のようで、
    多くの人は気づかずに
    日々を過ごしています。

    食事には、思っている以上の意味があります。
    だからこそ、その困難に寄り添うたび、心が痛み、
    深く思い知らされます。

    それでも私たちは、その苦しみに寄り添う
    勇気を、そっと持ち続けたいのです。

    彼女は持病のため、鼻から胃へ通した管で
    経腸栄養を受け入れ、命をつないでいます。

    “食べられない”現実を、ご家族は長い時間
    受け止めてこられました。

    はっきりした言葉ではなくても、
    「味だけでも感じてほしい」。
    そんな願いから始まった味覚ケアは、
    もう4年が経ちます。

    最初はお互いおっかなびっくり。
    それでも、彼女が好きだったものから
    少しずつ試しました。

    嫌いな時は口を閉じ、好きな時はもぐもぐと。
    目を細め、頬がゆるみ、時には口パクで
    言葉にならない声がこぼれることも。

    その小さな反応が、“食べること”の意義を
    あらためて教えてくれた、
    かけがえのない時間です。

    しばらく体調を崩し、
    お休みしていた期間を経て、
    主治医の許可で味覚ケアが再開した日。

    大切な方からいただいた
    山形の洋梨をサンタにそっとおめかしして、
    味覚ケア再開を祝う小さなサプライズに。

    不調を越えた日への敬意と、
    また味わえる喜びを託した
    梨のサンタを、横になる彼女のかたわらへ。
    そっと寄り添う記念の一枚を
    いただきました。

    洋梨の甘いしずくをガーゼにふくませ、
    ゆっくりと口元へ。

    もぐもぐと舌が動き、ひとくちの香りと甘みを
    確かめるように。

    反応は大きくなくても、その瞳がふっと潤んだ
    瞬間を見た時、言葉にならないうれしさで
    胸がつまりました。

    そばで長く介護を続けてこられた
    長男さんも、きっとホッとされたでしょう。

    今日のひとくちが尊い意味を持つこと、
    その瞬間を共に喜び合えること。

    たった一口。
    けれど、その一口は、
    人生のどこかの景色と
    つながることでしょう。

    台所の母の背中、
    季節の果物の香り、
    家族で囲んだ
    食卓のぬくもり。
    そして未来への思い出として。

    味わうという行為は、
    “生きてきた時間のしずく”を
    すくい上げるような、
    そんな営みなのかもしれません。

    私たちは、食べられるその日まで、
    どれほど一食を大切にできるのか。
    限られてこそ気づく食べることの尊さ。

    今日のひとくちは、彼女にも、長男さんにも、
    そして私たちにとっても、忘れがたい“ひと時”の
    贈り物でした。

    ──食べることは、生きること。
    そして“味わうこと”は愛情に触れること。

    その小さなひとしずくを
    味わってくださることが、
    私たちの支えにもなっています。

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