雪が降ったらきっと逝ってしまう。
雪は彼のシーズンだから。

せめて今年だけは、
雪の季節は先延ばしに。
足踏みしてくれますように。

そんな季節を迎える前に、
彼は旅立ってしまった。

責任感の強い彼は、
きっと雪を迎える準備も
大切なことだったのだろう。

病気からようやく解放された彼に、
涙声でそっと話しかける妻。

「本当に…よく頑張ったよね。
頑張りすぎ、我慢しすぎ。
何も言わないんだから。
…お疲れさま。」

大好きなお酒を味わってもらおう。
これからは、好きなだけ飲ませてあげるからね。

家族ひとりひとりが、
彼への想いを胸に、
お酒を口元へと運ぶ。

自分のおうちだから、
遠慮しなくていい。
気を遣わなくていい。
ただ、楽に過ごせる。

どんなに苦しくても彼を支えたのは、
間違いなく、家と家族の存在だった。

その朝、彼が旅立ったあと、
見上げた空は澄みわたる青。

そして向かった研修のテーマは、
「解決できない苦しみにどう向き合うか」。

これはきっと、
彼が私に託した宿題なんだと思う。

胸にしっかりと受け止めて、
これからは私自身の支えとして
見守っていてくださいね。

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